荒れ果てた大地に立っている。

周りには何もない。

しかし、どこかなつかしい。

同時に悲しみもこみあげてくる

「香奈【カナ】」

隣に立っていた男に名前を呼ばれる。

「なあに?」

凛は香奈と呼ばれても、違和感なく返事をする。

隣の男の顔を見ると、はっきりとは映らないが、涙を流しているように見えた。

「香奈、すまない。俺はもう行かなければならない。お前を残して」

香奈と呼ばれる凛は、その男をそっと抱き締めた。

「私なら大丈夫。ここであなたを待ってる。たとえ、あなたが二度と戻らなくても」

そこで毎日目が覚める。

目が覚めると必ず凛は涙を流していた。

最初は誰だか分からなかったあの二人も、今では自分の父と母なのでは、と思うようになった。

母親、つまり香奈と呼ばれる女性の意識のなかに、凛が入り込んでいるのでは、と考えるようになった。

香奈が自分の母親だから、母親の遺伝子の一部を受け継いだから、こんな夢を見るのだと。