凛が本部長室を退出した後、妙な沈黙がその部屋を包んだ。
「…医療班長、凛はどうだった?」
マーキスが尋ねる。
「…記憶喪失です。凛さんにとってあまりに辛過ぎたことを、自ら封印してしまっています」
「治る?」
「本当のことを言えば全て思い出すかもしれません。…ですが、全て思い出した凛さんは絶え切れるか分かりません」
「どういうこと?」
マーキスが更に尋ねる。
「…気が可笑しくなってしまうってことですよ」
李楼が言った。
その表情は暗い。
聖職者のいない騎士団となった今、李楼は何かしら対策を立てなければならなかった。
他の支部から聖職者を派遣してもらうという手がある。
だが、それも厳しいように思えた。

