本当のことを言えば記憶は戻るかもしれない。
だが、まだ若干15歳の少女にそれをするのは酷な気がした。
凛の精神は慎と京介の死を受けとめ切れず、その記憶を封印したのだ。
無理矢理封印を外すのはひどすぎる。
凛を愛しくおもう医療班長にはできなかった。
「…まだ疲れているみたいですね、部屋で休んだほうがいいでしょう」
医療班長が出した結論はこれだった。
記憶喪失を疲れと言った。
「はい」
凛は何も疑わず、微笑んで答えた。
その笑みに医療班長の心は痛んだ。
「私送るよ」
マーキスが、凛が部屋まで行くのに付き添いを申し出たが、凛はそれを断った。

