聖職者


「どこまで覚えてるんだい?」

李楼が尋ねてくる。

その表情は険しかった。

「えっと…、マーキスと公園に行こうとして、昼間のパリで…」

「そこから先は?」

凛は首を横に振った。

そして、必死にその先を思い出そうとする。

そんな凛を余所に、マーキスと李楼はちらりと目を合わせた。

そこに二人だけの無言の会話が成立する。

李楼は直ぐ様医療班長に電話を掛けた。

マーキスはじっと凛の様子を伺っている。

それぞれが持っている飲みかけのミルクティーは、とっくに冷めていた。