聖職者


「凛、大丈夫?痛いところはない?」

マーキスが涙目になりながら聞いてきた。

凛はとっさに「マーキスに抱き締められたところが痛い」と言いそうになったが、マーキスの本当に心配そうな顔を見て言うのをやめた。

「…ん、大丈夫」

「ちょっとごめんね」

医療班長はそう言うと、凛の両頬に手を添えた。

そのまま自分の額を凛の額に触れさせた。

「熱もないようだね、顔色も悪くない。凛さん、どこか不自由なところはありますか?」

「ないです」

「それはよかった。もう退院してもいいですよ」

医療班長はにこやかに言った。

凛はありがとうございます、とだけ言い、ベッドを降りた。

床に立つと、久しぶりな感じがした。

「私はどれくらい寝てたの?」

「丸一日かな」

一日寝ていただけで、こんなにも立ちにくいものなのか…