あらあら顔が真っ赤なこと。

「図星だった?」
「っ!」

ブンブンブン。まるでそんな効果音でも聞こえてきそうな程に首を左右に振って全否定。

「た、ただ…いつかそういう人ができたときのために、よ、予行練習です」
「ほう、なるほど」

この子はまったくどこまでも…

「可愛い奴め」
「そ、そんなことより!私はちなちゃんの意見をお聞きしたいです!」
「私の?何よ?」
「しー!声が大きいです!」

風子、あんたもね。とは敢えて言わず、眉間に皺を寄せキョロキョロと辺りを見回し誰もいないことを確かめている友人を眺めながら、私は目の前のコーヒーカップへと手を伸ばした。
(もちろんここは私の部屋で、私たち以外に人が居るわけはないのだが)


「で、何よ?」
「だからそのー…ち、ちなちゃんには素敵な彼氏さんがい、いらっしゃるじゃないですか」
「ふむ。素敵かどうかは主観の問題だけどね」
「何を仰いますか!草さんはとてもとても優しくて素敵な方です!」
「はいはい、そうでした」

何で彼女の私より彼女の友人の方が草太のことを褒めているのか、私にはまったく理解はできないのだが…とりあえずはなしが進まないので首を縦に振ることにした。

「草さんのこと、好きですか?」
「は?」

唐突に、真剣。
目を潤ませて、頬染めて、上目遣いで問われれば、女の私でも心拍数が急上昇してしまうくらい可愛い子。

「まあ、好きよ?じゃなきゃ付き合わないし」

ズキリ。少しだけ左胸が痛むのは、きっと気のせい。

「では、草さんのこと…愛していますか?」

好きの次は愛。
終いには草さんのために死ねますか?、何て聞かれるんじゃなかろうか。
(この場合、愛してる=その人のために死ねるが正しいのか)


「それはわからない」
「どうしてですか?」

「愛の意味がわからないから?」

ゆらゆら。
風子の大きな瞳の奥が揺れたのを、私は見逃さなかった。