「寝れるかってんだよ、全く。」
独り言で寂しさを紛らわし、ベランダから空を眺めた。
そこには雲一つない明るく輝く月と星達の楽園が広がってた。
神秘的な光景に圧倒され、別世界に居る気分だった。
「ねぇ、あの星はいくつあるの?」
「分からない。」
「それじゃ、世界はいくつあるの?」
あれ?俺は誰と話してるんだ?
右は手すりがあるだけ。
左は…誰だ?この子。
麦わら帽子に水色のワンピースを着た女の子がこっちを向いて立ってた。
「誰だ?お前。どこのガキだ。」
「答えて。世界はいくつあるの?」
「そんなの知るかよ!てか…おい…お前……」
勢いで答えちまった。
静香から聞いた話を忘れてた。
興味なかったし、年寄りの戯言(たわごと)だと思ってたからな。
今更、自分の失敗を正当化してももう遅い。
倒れてる自分とその横で手を振る女の子が遠ざかっていくのだから。