墓は見違えるほど綺麗になった。
花を買いにいく暇がないほど時間がかかり、裏山に咲いてあった花で補う。
水も山水を使った。
水道水より山水の方が花も長持ちすると思ったからだ。
作業を始めたのは朝10時で全てが終わったのは夜の7時半過ぎ。
こんなに人のために働いたのは初めてだった。
邪魔くさいとも思わず、投げだす事もない。
俺にとってはどうでもいい事なのだが、帰り道は清々しい気持ちで満たされてた。

家に着き、飯を食い終わると、静香が不思議な話を聞かせてくれた。
「市原さん、この町の伝承をご存知ですか?」
「伝承?都市伝説みたいなものか…いや、これといったものはないな。それがどうした?」
「どうって事はないんですが、気になりませんか?」
「いや、俺は別に興味な…あっちぃ!何すんだよ!お茶ぐらい普通につげないのか!」
「あら、ごめんなさ~い。あんたの無神経さにビックリして手元が狂っちゃった。ちゃんと聞いてやりなさいよ。」
こいつは何かと声のトーンを落とすから嫌いだ。
「んじゃ聞かせてくれ…ちゃんと言っただろ!何で睨むんだよ。分かった…その話詳しく聞かせてくれ~!」