夜8時。
テレビ番組が活気づく時間。
いつもなら賑やかに騒ぎ立てる芸人をブラウン管越しに眺めてるのだが、今日は違う。
夜飯を終え、向かい合ったまま気まずい雰囲気になだれ込んでいた。
「あ、あのさ…」
「何?なんかしたい事でも決まった?」
「はい!何でしょうか?」
こんな具合に俺が喋ると重なり合う双子の言葉が鎖のようにからみついてくるのだ。
この状況を打破するにはテレビをつけるしかないが、リモコンがどこにあるのかサッパリだ。
俺は静かに席を立ち、さっき見つけた一階の便所へと逃げ込んだ。
「んなっ!…何なんだ。この家は。」
ドアに立ち入り禁止の札が掛けられてた理由は入ってからじゃないと分からない。
天井・壁紙・床は全て3D仕様の宇宙が描かれており、ブラックライトで星達が浮かび上がってくる。
便器は便器でブラックホールをモチーフにされ、水が流れる部分にまでペイントを施されてた。
「あいつらの親はどんな趣味してんだよ。」
妹の手料理があまりにも美味しかった為、食いすぎて腸が悲鳴をあげだしたから仕方なくブラックホールに腰を下ろした。