「ん?うわっ!あんた、汗まみれじゃない!」
「大丈夫ですか?市原さん。」
ポケットからハンカチを取り出し、汗を拭き取ってくれる妹の優しさを見習ってほしいものだ。
しかし、時にはその優しさが仇となる事がある。
ハンカチからほのかに香る石鹸の匂いと、かがんだ時に見える胸の谷間が如意棒を限界まで強化していく。
「ちょ、ちょっと腹の調子が悪いみたいだ。便所の場所を教えてくれ。」
「トイレ?それならそこの階段を上がって右の突き当たりに…って真也~!」
場所を聞きだすと下腹部周辺を両腕で抱え、安全地帯へ急いだ。
自分でもビックリするぐらいのスピードで階段を上がり、疾風の如く廊下を駆け抜けた。

「な、何なんだ?この便所はっ!」
壁紙は草原をモチーフにした3D仕様で天井には青空に浮かぶ雲が描かれてた。
当然これも3D仕様だ。
床は芝生が隙間なく敷き詰められてる。
大自然の中にポツンと置かれた便器で用をたせるわけがない。
野グソをしてる気分になって申し訳なく思ってしまう。
しかもここを出た時、誰かと出会(でくわ)したらついうっかり謝ってしまうかもしれない。
如意棒もビックリして天竺を諦めるくらい最悪な便所だった。