一日を締めくくるホームルームの時間。
俺達からすれば雑談をする為の15分にすぎない。
「なぁ、市原~。あの女誰だよ。」
「ん?あいつは下川の兄貴だ。」
「下川の兄貴?…ってどう見たって女だったじゃん!」
「…最近、女装が流行ってるらしい。」
「マジっすか!」
きっとハルは小説の読みすぎで現実と物語りがごちゃ混ぜになってるんだろう。
「今はどんな小説を読んでんだ?」
「…これ。」
「“変装する男達”って…面白いのか?」
「…ヤバい。」
「そうか、もう、邪魔しないから楽しんでくれ。」
変わり者は本に夢中、後は前のバカをからかうだけだ。
「なぁ、市原!変装って本当か!?」
「本当かどうか確かめてみろよ。」
面白そうだから泳がせておくか。
「よしっ!月曜日の昼休みちょっと付き合えよ。借りは返さないとね。グフフッ。」
「借りって何をされたんだ?」
「あいつ、猛スピードで追いかけてきていきなりドーン!しやがったんだ!」
「ドーン!って何だよ。」
「背中をドーン!だよっ!」
“背中”のキーワードで跳び蹴りだと分かった。