「紗耶香…。」
「えっ?あっ、はい。」
「全て冗談だ。」
「んなっ!?…何ですって?」
俺には立ち上がる般若(はんにゃ)にしか見えなかった。
顔の自由を取り返した結果、全身の自由を奪われようとしてる。
その時、タイミングよく救世主が現れた。
「あれ?シン。何してんの?」
「コウ!後は任せたぞ。」
「えっ!?何っ!後って何ぃ!!おい!市原シンっ!」
市原シンって何だよ。
せめて“ヤ”もつけてくれ。
コウには悪いが、俺は貧血で倒れた事にさせてもらう。
「あんた…誰っ!」
「ヒィイイイ~!出たぁぁぁ~!!」
コウが逃げ出したのも無理はない。
有り得ない程の威圧感を放ってるんだから。
「出たとは何よっ!待ちなさいっ!こら~!」
「うぎゃっ!」
コウを追っていってくれるのは有りがたいが、わざわざ踏んで行かなくても…。
「フゥ。危なかったぁ。」
「真也君、さっきのはどういう意味や?」
「えっ?いや、その~…絵里香、柴神を止めてくれよ。」
「自業自得だ。」
「マジか…下川、お前だけが頼りだ。」
「私にも知る権利があります。」
一難去ってまた一難。
俺はチャイムがなるまで逃げ続けた。