過去を思い出してた時、何処からか狂犬病にかかった犬の声が聞こえてきた。
「そんな気分じゃねぇけど、行くしか無いか！」
気合いを入れて机の上の物を鞄に押し込み、声を頼りに走った。
都合良く校門に群がるワンコロ集団。
鞄とブレザーをほおりなげ、いざ出陣…するはずだった。
「うぉぉらぁぁぁ…あっ？」
「シッ！“ヤシン”の邪魔すんな。」
色の白い小柄な女に背中を掴まれ、校舎内へ引き戻された。
「お前も怪力女か。」
「もういっぺん言ってみぃ。お前の手足もぎ取ったるからな！」
「マジでされそうだから辞めとく。だからおっかねぇ顔近づけないでくれないか？」
下川の姉貴より質が悪そうだ。
「ほら、見とけ。始まんぞ。」
綺麗な長い髪をなびかせる女子生徒に寄ってたかる飢えた犬共。
「ダメだ！見てられねぇ！」
「あっ！クソっ！」
着てたカッターシャツは破れたが、構わず走った。
「ハッ！」
目の前でかけ声と共に繰り出される女子生徒の蹴りは目にもとまらぬ速さで、細い脚からは想像もつかない強さを物語ってる。
多彩な蹴り技でワンコロ集団を地面にひれ伏しちまった。