「…君…原君…市原君っ!」
また誰かの声が俺を呼ぶ。
「ん?今度は宮元かよ…あっ!小動物少女はどこだっ!?」
「誰か居たの?私が気付いた時には市原君だけだったよ。」
夢だったかと両手で顔を撫でる。
「ぬわっ!何だっ!」
手には汚く黄ばんだ紙切れが握られてた。
広げて見てみると、校内の地図が書かれており、校舎裏に赤ペンでバツが書かれてる。
「何?それ。」
「宝の地図みたいだな。」
「面白そうだから行ってみようよ!」
「えっ?」
宮元は俺の手を掴み、校舎裏へ走った。
またあのモヤモヤが湧き出てくる。
教室ではみせない無邪気な表情を浮かべて走る姿は別人みたいだった。
それは特別な何かを感じてるからなのか、それとも手から伝わってくる人の温もりを受け止めてるからなのか自分でも分からない。
理解できるほど大人じゃないからだと思う。
今は精一杯もがいて、もがきまくってみよう。
何も考えなくても気づけるその日まで。
悩みがなくなった訳じゃない。
モヤモヤが消し去った訳でもない。
ただ、軽くなった…体と心が。
なぜかは考えない。
そう決めたから…。
そして俺は生き方を変えようと思う。
飛び方を忘れた龍のように。