「なぁに?私の顔に何かついてる?」
何故か優しく微笑む宮元から視線を反らしてしまう。
「付いてるけど、問題ないから気にするな。タオルは洗って返すよ。」
「付いてるなら取ってよ。タオルはそのままでもいいわ。」
取れるわけがない。
優しい視線を放つ目とソフトに突き出た鼻、それに柔らかさを物語る唇なんて。
「取れるなら取ってやるさ。でも、取らない方がいいと思うぜ。んじゃ、やる事があるから、またな。」
逃げるしかなかった。
モヤモヤした何かが迫ってくる感覚が怖かったのかもしれない。
チャイムがなっても教室には戻らず、中庭の芝生でずっと考えた。
初めて味わったあの感覚が何なのか。
いくら考えても分からない、誰かに聞こうにもどうやって聞いたらいいか分からない。
今はただ、こうして空を泳ぐ雲を眺めていたい…そんな気分に浸りたかっただけかもしれない。