「お~い!ハル!連れ…やっぱりか。」
「…放せ。」
ずっと腕を噛みつくおかっぱの妖怪を引き連れてバカと怖がりが居るであろう教室へ向かった。
すれ違う奴らは何かしらのリアクションを起こす。
そりゃ、当然だろうな。
放せ放せと呟く妖怪を捕まえたんだから。

「ハル!逃げんなよ!ほら、これ。」
「ヒィイイイ~!連れてくんなよぉ!」
教室の端でホコリ玉のように丸まってた片方は走り去り、残ってる方に妖怪を見せた。
「…遥っ!」
「…にぃにぃ。」
ハルは相当心配してたんだろう。
涙を流して喜ぶハルを見てると腕をヨダレまみれにした甲斐があったと思える。
「んじゃ、後は頼んだぜ。」
「…ありがとう、シン。」
「気にすんな。」
ヨダレまみれの腕を洗いに教室をあとにした。
無数に付いた歯形が入れ墨に見えないか心配に思う。
それでなくても不良と思われて迷惑してるってのに。
濡れた腕を拭く為、ポケットに手を突っ込む。
「持ってる訳ないか。」
愚痴を垂れてると横からタオルを渡された。
「おっ!サンキュー!」
腕を拭きながらタオルの持ち主を見て少し戸惑ってしまった。