「朝はこの中に居たんだ。」
「研究材料保管室?なんだ?ここ。」
「コウ、お宝が眠ってるかもしれないぞ。」
「お宝!ひゃっほ~い!」
コウは俺の思惑通り勢いよく不気味な部屋のドアをスライドさせた。
相変わらず薄暗い部屋だ。
「あっ!もしかして…やっぱりか。」
「…あぁ、後は頼む。」
青ざめた顔で手のひらをみせるコウは本当に怖がりだ。
「お宝はどこだーっ!」
それに比べ、欲の塊は宝探しに没頭してる。
「やれやれ…それにしてもあの様子だとまだここに居るはずなんだが…。」
朝に見かけた場所を覗いた。
「やっぱりここか…てか、なんだよ。それは。」
「…腕。食べる?」
「食えるかっ!そんなもん!一緒に来い。」
模型の腕にかぶりつく少女の手首を掴み、震える兄ちゃんの所まで連れていこうとした。
「ぎゃあぁぁぁ!」
エナメル質の物体が少女を掴む腕を挟み込む。
万力(まんりき)に身を挟まれる感覚に我慢出来ず、叫んでしまった。
「ん?どうした?シン…っておいっ!ぼ、僕には見える。う、腕に少女の幽霊が…ヒィイイイ~!来るなぁぁ!」
バカにつられて臆病な兄ちゃんも逃げてなかったらいいが…。