町の片隅で～ファーストストーリー～

「すぐ怒るなよ、狂犬病。お前が聞かなかったから言わなかったんだ。んで？俺に何の用だ？」
言い方が悪くて噴火しそうなのか、プルプルと震えだした。
「お、おい。マグマ噴き出すなよ？なっ？コウ、何とか言ってやってくれ！」
「ションベ…ぐふぉ！」
コウに振った俺がバカだった。
俺のパンチが数秒遅かったら噴火予定時間を大幅に早めていただろう。
「あのさ、いつまで震えてんだ？授業が…」
始まるぞと言いかかった時、いきなり顔をあげ、涙を浮かべた目で睨んできた。
そして次の瞬間、教室中のギャラリーの視線を釘付けにした。
「私、あなたの事が好きっ！」
「えっ！？あなた？って…ちょっ…おい！」
見ず知らずの女に告られ、無防備の懐に抱きつかれた。
コウは羨ましそうに指をくわえて見てるだけ。
男のギャラリーは茶化し、女のギャラリーは楽しそうな悲鳴をあげる。
引き離そうとしても腕を噛んで抵抗し続けた。
「どうにかしてくれ～！」
俺の声はチャイムによってかき消されてしまった。