あれから俺は毎日病院に通った。
病室にはいつも一足先にキョンさんが来てる。
大晦日も正月も含めて。
「いつもすみません。いろいろ忙しいのに。」
「いいえ、私はお婆さんと話すの好きなので毎日来るのが楽しいんです。」
「そう言って貰えると婆ちゃんも喜びます。婆ちゃん、今日は婆ちゃんの大好きな紅玉(※リンゴの種類)を持ってきたぞ。」
「んまぁ~、キョンさん剥いてくれないかぇ~?」
「それぐらい俺がやるよ!」
「ほぉ~。真坊は桂剥き(※皮を薄く帯状に剥く剥き方)出来るの~かぁ~?」
「当たり前だ。」
「それじゃ今回はお任せします。」
「ウッシャー!剥くぜっ!」
気合いを入れるまでは良かったけど、手に力が入りすぎて果物ナイフがプルプルと小刻みに揺れ動く。
婆ちゃんもキョンさんも不安そうにこっちを見つめる。
「だ、大丈夫だって!」
ゆっくり刃を滑らせていく。
その時、連なってた皮が切れ、皮の表面をナイフが滑り台を楽しむ子供のようにはしゃぎながら指に突き刺さった。