「婆ちゃん…頼むからそんな事言わないでくれ。死を受け入れず、生きようとしてくれよ!俺には婆ちゃんしかいないんだっ!頼む…頼むからそんな事言わないでくれ…」
ダサくても惨めでも構わない。
伝えたい事を言わないまま終わるのは嫌だ。
俺は紗耶香と遅れて到着した静香に連れ出され病室を後にした。

廊下の角にある休憩室で泣きじゃくる俺の涙を静香が優しく拭ってくれた。
「悪い、お前らに気を使わせちまって…ありがとう。もう、大丈夫だ。」
「市原さんこそもっと私達を頼って下さい。」
「そうよ!あんたが誰にも頼らないから気を使うんじゃない!それじゃ、私はお母さんの手伝いしてくるから静香、後はよろしくね。」
俺はどうしたらいいのか分からなかった。
ああいう時、何て声をかけたら良かったのか考える余裕さえ失ってた。
本当に辛いのは婆ちゃん自身なのに。