紅葉に気を取られ気付けば冬がやってきた。
俺は冬が嫌いだ。
町が無駄にざわめき、忘れてはいけない悲しい記憶があるから。

その中で最も辛い時期、それが今日の12月24日。
天気は快晴だが、気分は曇天(どんてん)。
そんな無気力な俺を訪ねる訪問者がチャイムを鳴らす。
1回…2回…3回…4回…。
いくら居留守を使っても帰ろうとしない諦めの悪い輩(やから)に激怒した俺は荒々しくドアを開けて怒鳴ってやった。
「うっせぇ!誰も出ねぇんだから黙って引き上げればいいだろっ!」
「市原さん!お婆さんが!」
ドアの向こうには慌てる静香が息を切らせて立ってた。
「婆ちゃんがどうしたんだ!」
「お婆さんが倒れていたのでお父さんが病院へ連れていきました。案内します!」
「ああ!頼む!」
静香に手を引かれて病院へ走った。