オッサンの声を頼りに奥へと進む。
地面にはたくさんのコケが生えており、滑りやすくなってた。
「紗耶香、気を付けろよ。かなり滑るぞ。」
「うん、分かった。」

それから20分ぐらい奥へ進むとオッサンの居場所を確認出来る所まできた。
すぐに助けてあげたかったが、雨水などで溶けた石灰岩が天然の滑り台と化していて助ける方法が思いつかなかった。
洞窟の中はかなり冷えていてこうしてる間にもジワジワと体力を消耗していく。
焦る気持ちを抑え、頭を働かせてると突然、紗耶香が大声を出した。
「キャー!肩に何か付いたー!」
「落ち着け!あっ!危ねぇっ!」
「きゃぁぁぁ!」
肩に付いたゴキブリを振り払おうと必死になりすぎ、周りが見えてなかったのだろう。
天然の滑り台に足をとられて落ちそうになった。
俺は間一髪で紗耶香の手首を掴む事に成功した。
「何やってんだっ!引っ張るぞ!フンッ!」
「ごめん…ありがと…」
ボソッと謝る声がやけに心へ響いた。