「キャー!」
「走れっー!」
俺は紗耶香の手を引っ張って洞窟の奥へと走り出した。
ビビるビビらないの話じゃない。
天井を百足(ムカデ)や蚰蜒(ゲジゲジ)の類がひしめき合ってるのだから。
いつ落ちてくるか分からない状況下で慎重に進めるわけがなく、前を照らす余裕もなかった。

数分後、ゲテモノロードを突破した俺達は周りを警戒しながら速度を落とした。
その時、どこからか異様な声が聞こえてきた。
「ホイ、ホイ、ヒャッホイ!」
「真也、今、変な声しなかった?」
「ガキが肝試しにでも来てんだろ。」
「ホイ、ホイ、ヒャッ…うぉぉぉ!痛てぇぇぇ!」
鈍い音と共に聞こえてきた声でオッサンだとすぐに分かった。
「オッサーン!どこだー?」
「ん?ここだ!」
間違ってはないが、分かるはずもない。
「声を出し続けてくれ。」
「分かった。ウッホイウッホイウッホイウッホイ…」
助けを求めてるというよりは楽しんでる感じがした。