『実は私が中学生の時、裏山に入って遭難した事があるんです。お父さんが美味しい木の実を取ってきてくれると言って山を登って行ったきり帰って来ませんでした。翌朝に全身ボロボロの姿で帰ってきたんです。きっと…今回も…』
娘に涙を流させるオッサンに一言言ってやろうと血眼で探した。

山の中腹に来たときだった。
紗耶香が突然大声をだした。
「真也!ちょっと来てっ!」
「どうした!!」
慌てて駆け寄ると今にも倒れそうな看板があるだけだった。
「なんだよ。驚かせんなよな。」
「看板なんかでビビらないわよ!書いてある内容にビックリしたのっ!」
看板には『この先は地震の影響を受けやすく、地割れが多い為、登山の際には十分ご注意下さい。』と、書いてある。
「地割れがなんだよ。下を見て歩けば問題ねぇじゃねぇか。」
「違うって!もしかしたらお父さんが地割れに落ちたんじゃないかって言ってるのっ!頭悪いわねぇ。」
「そこまでドジじゃ…いや、有り得るな。それじゃ地割れを中心に探すか。」
はぐれない為なのか地割れにはまった時、俺を道連れにする為なのか分からないが、紗耶香は俺の腕をガッチリと両手で掴んだ。
ちゃんと血が通ってるかは定かではない。