キョンさんと喋ってるとオッサンが俺の服を引っ張ってきた。
「おい、色男。お前もトランプしろや。」
「俺はいいよ。トランプってガラじゃないし。」
「んじゃ、散歩でも行くか。」
「わっ、ちょっ、放せっ！」
「キョン、俺はこいつと肉に合う炭酸買ってくる。」
無理やり肩をくまれ連れ出されちまった。
「どこ行くんだよ。」
「うっせーな、ちょっとは付き合え。」
オッサンは何を考え、何の目的があって隣町まで俺を連れてきたのか全く分からない。
「ここだ…久しぶりに来たが、何も変わっちゃいねぇ。」
「ここは…孤児院？」
「そうだが、少し違う。ここはキョンの実家だ。」
「どういう意味だ？」
「あいつは幼い時から長い間この孤児院に入れられてたんだ。常に誰かに気を使い、気を使われ続けて生きてきた。それが苦痛になり自殺未遂を何度か犯した事もあるそうだ。過去は変えられねぇ…皮肉な事に深い心の傷は経験値として一生付きまとう。だから俺は惚れた女の為にちっぽけなプライドを捨てて今のような性格をモノにしたんだ。」