チェーンが外されると勢いよく飛び込んできた。
例えるなら檻(おり)を開けられた闘牛だ。
「やっぱり我が家は最高だぜ~!…ん?」
ヤバい!目が合っちまった!
眉間にシワを寄せた闘牛がこっちへと歩み寄る。
「うっ…近すぎだろ…」
ニオイを嗅いで仲間か獲物かを分別してるのだろう。
顔を近づけて俺の目をジッと見つめてくる。
その距離、約10センチ。
どうやって破天荒なオッサンと距離をあけるか考えてると、いきなり闘牛が雄叫びを上げた。
「テメェ!俺様の家で何してやがる!部外者は即刻立ち去れ~!」
「はいよ、んじゃあな。紗耶香、静香。」
これでやっと帰れる。
誰かと居るのには慣れてきたが、人ん家は落ち着かない。
開放感に満ち溢れながら帰るつもりだった。
「おい!テメェは冗談も通じねぇのか!」
「場所が場所だけに。」
当たり障りのない言葉を返した。
「まぁ、そう言うな。湯呑みぐらい出してやるから入れよ。ほら、来いっ!」
紗耶香の強引さは親譲りだ。
服を引っ張られて再び家の中へと連れて行かれた。