【短編】366日




「そっか……。

俺いけると思ったのに。

はははっ。

じゃあ、悪いなこんな夜に。」

「ううん。」

「じゃあ、そいつと幸せになれよ。」

「うん、ありがとう。じゃあ」



直哉の目には少し涙がたまっていた。

見間違えかもしれないけど。

直哉、私を好きになってくれてありがとう。

これからもいい友達でいようね


私は直哉と別れてから、家に戻った。


部屋にはまだ勉強する楓の姿。

「お、帰って来たんか。」

「うん」

「なんかあったか?」

「ううん…。なんにも。」

「そっか。」

楓、

私、直哉に告白されて、

もっとあなたのことが好きになったよ。


隣で勉強している楓に私は

……抱きつきそうになった。

触れたい。

抱きついて、キスして、

それ以上のことも、楓としたい。


ねぇ、楓は私なんか眼中にないの?

楓、私だけを見ていてよ…。


「楓……。」

「なんや?」

「ううん。」

…―――好き。

たった二文字のこれだけの言葉も

伝えられなくて、臆病で、

楓を思うとこんなにも胸が苦しくて

こんなことなら、楓を

好きにならなかったらよかったのに。