「ワタナベの事、ちゃんと断れる?」

「…はい。」

私が返事をすると、わしゃわしゃと頭を撫でられる。

そして
「その前に、ちゃんとハラダさんの気持ちを聞かせてもらわないと。あんな曖昧な言い方じゃなくて。」

そう言ったヤナギさんには意地悪な顔が戻ってきていた。

「あ、あの。さっきのじゃ…駄目、なんですか?」

「駄目。」

もう一度言ってみろと言われて、そんな簡単に言えるぐらいなら苦労はしない。

言えないから、恥ずかしいから、あんな曖昧な言葉になってしまったのに…

ヤナギさんはそれも分かっていて、こうやって私に聞いているんだ。

押し黙る私に「どうする?もう帰る?」少し意地悪な言い方で聞く。

「あっ。待ってください。」

意を決した私は会議室から出て行こうとするヤナギさんを引き止めた。