Be impatient

目にじんわりと感じる熱さ。

零れ落ちないように我慢していた涙が、滴となり握り締めていた手の甲を濡らした。

「ごめん。」

頭の上から聞こえたのはヤナギさんの申し訳なさそうな声で、やっぱりどうにか誤魔化すべきだった。そう思ってしまう。

ヤナギさんに泣き顔なんか見せれない。

私の上司で、友だちでも何でもない赤の他人で、私の好きな人。

そんな人に無防備に泣き顔なんて見せちゃいけないんだ。

「すみません。」

震える声で言い椅子から立ち上がると、トイレへ駆け込もうとした。

しかし、それを遮ったのはヤナギさんの声だった。

「待って。」

どうして私を引き留めるのか、それが分からず私は頬を濡らしながら、問いかける様にヤナギさんを見つめていた。

「ごめん。言い過ぎた。」

言ったヤナギさんは少し困ったような顔で、私は益々意味が分からなかった。