Ｂe ｉｍｐａｔｉｅｎｔ

このまま知らん振りをして、仕事の続きをしようかと思った。

背中には嫌な汗が流れ、熱かった顔も一気に冷めていく。

彷徨わせていた視線を恐る恐るヤナギさんに合わせると。

いつの間にかヤナギさんは椅子ごと私のすぐ前まで来ていて、その両手は私を囲うように椅子の肘掛の部分をしっかりと掴んでいた。

「ヤ、ヤナギさん……ひょっとしてからかってるんですか？」

目の前のヤナギさんはキュッと口角を上げ、今までに見た事も無い様な意地悪な顔をしていた。

ニヤリと笑ったヤナギさんと目が合ってしまった私は、その目から逃れなくなる。

「いや、からかってなんかないけど？」

ヤナギさんは言うが、そんな意地悪な顔をしながらでは説得力なんて全くなかった。

「じゃあ、やっぱりハラダさんの好きな人はシマダ？」

ここは、好きな人はシマダくんだと言って乗り切るべきなんだろうか…

ぐちゃぐちゃの頭の中で考える事は、どうすればこの場を乗り切れるのか。だった。