Ｂe ｉｍｐａｔｉｅｎｔ

「ハラダさんは電車？」

「ひぇっ…」

会社を出て駅までの道を歩いていると突然ヤナギさんに話し掛けられ驚き、思わず変な声が出てしまった。

ヤナギさんはそんな私に怪訝な顔をする事もなく「ハラダさんは電車？」もう一度私に聞いた。

あからさまに笑う事はなかったが、そう言ったヤナギさんは目を細め少し笑っている様にも見える。

「い、いえ。バス通勤です。」

「じゃあ、俺は電車だから。」

ヤナギさんは駅の方を指差し言った。

いつの間にかバス停まで来ていたようで、私は会社からここまでの道のり、ヤナギさんと何も話せなかった事を悔やんだ。

「そうなんですか…」

私はそう言ったが、自分でも分かる位その声は沈んでいて、私の気持ちがヤナギさんにバレてしまうんじゃないのかと思った。

俯きかけていた顔を上げてヤナギさんの表情を確認するが、ヤナギさんの表情は変わる事なくいつものままで、その顔は無表情と言う言葉が頭をよぎる。

「お疲れ様でした……」

私が言うとヤナギさんは一歩前踏み出し、珍しく私の顔を覗き込んだ。