Be impatient

私たちは並んで廊下を歩く。

並ぶと言っても、私はヤナギさんの半歩程後ろを付いて歩いていた。

ヤナギさんの近くにいれば、彼の持つ柔らかな空気に包まれているような気がして、それだけで胸がぎゅっとなる。

私はこんなにもヤナギさんの事が好きなのに。

胸がドキドキと騒がしいのに。

私の少し前を歩いているヤナギさんはまったくいつものヤナギさんで、私の方を向いてくれようともしない。

ドキドキしているのは私だけで、なんだか寂しくなる。

もともと口数の少ないヤナギさんだから、会話が弾むなんて期待はしていないが、少しぐらいこっちを向いてくれても良いのに、と思う。

ヤナギさんは無言でエレベーターのボタンを押し、無言でエレベーターが来るのを待っていた。

私はそんなヤナギさんの横顔を、こっそりと盗み見る事しか出来ない。

会話が無くても気まずいとか息が詰まるとかそんな事はないが、ただちょっぴり寂しい。

折角ヤナギさんと二人で居るんだから話し掛ければ良いのに、怖くてそれも出来なかった。