そこはこのそばにある衣料品店の倉庫らしき場所だった。
今のところ誰もいない。
「橘〜はやくここ出…」
「しっ!人おる」
橘はそう言うとあたしの口をおさえた。
橘の手…
前から思ってたんやけど、橘の手って細くて長い、きれいな手。
「オイ!何しとんねん」
はっと気付くと、橘の手に手をのばしているあたしがいた。
恥ずかし!
「及川、隠れろ」
突然低い声でそう言われたあたしは、とっさにしゃがみこみ、大きなゴミ箱の後ろに隠れた。
「なんかさ、映画っぽくない!?(笑)」
店員さんらしき人の足音と共に、小さな声で橘は言った。
「そうやけど…ある意味犯罪に手を染めてる気がしてならんわ…」
あたしも答える。
「オーゲサ(笑)。まあ勝手に人の土地入ってるしなあ。ま、早よ抜けよ」
するとカラン、と音がする。
「わっ」
足元に転がっていた、空の缶ジュースが音を立てた。
「誰や」
男の店員さんは、ゴミ箱へ近付いてくる。
やばいやばいやばいやばい…!!!
すると店員さんの足音が止まった。
バレた…?
「なんや。缶ジュースやん。あの新入りめ、ちゃんと叱らなあかんな」
そう言うとドアが閉まる音がして、
辺りはシーンと静まり返って。
「「助かった…」」



