たまたまポーチに入ってたウォータープルーフのマスカラをあたしはトイレで付け直して、またシアターへと戻った。
「ちょ、及川早く!!!もうすぐ舞台挨拶終わるで!!!」
手招きをしながら橘は小さな声であたしに言った。
「ちょっとさあー、もっと早く言ってや。泣ける映画なんコレ」
「―聞く限り。」
「嘘ー。あたしが涙もろいん知っててやな山本さんっ!!!」
あたしは握りこぶしを作って言った。
「別にそういう訳ちゃうって。ていうかお前泣き過ぎちゃう?映画始まったら大変やし、うわどうしよ」
「はっ?!そんなん言っとる橘のほうが泣いてたりして〜」
冗談であたしが言うと、橘は大きな声で叫びに近い声で。
「うっさい!!」
すると一瞬時が止まった。
周りのお客さんはあたし達をガン見。
「「スイマセン…」」



