「怪我は大したことないで!」

勇人さんの後ろから、大阪弁の男が明るい声で話しかけてきた

え?

誰…この人

「久我さん」

藤城君が頭を下げた

「竜ボンのかわりや
仕事が入って来れないさかい
俺が送ってきたでぇ」

久我さんと呼ばれた大阪弁の男の人は、陽気な笑顔であたしたちに手を振った

「腹の肉をちぃっとばかっし切っただけや
出血の量を見たときは、焦ったけど
なんや、大したことない怪我やったわ
消毒と、替えのガーゼを多めに持たせたから…誰かが手当てしてやってや」

この人…お医者さん?

藤城君のお兄さんとどんな関係なの?

あたしは首をかしげて、久我さんを見つめた

「なんや…別嬪さんやなあ
彼氏、おんの?」

「え?」

久我さんと目が合ったあたしは、驚いた声を出す

久我さんはあたしにずかずかと近づいてくると、あたしの手を掴んだ

「なあ…彼氏はおんの?
俺ぇ、恋人募集中やねん」

「は?」

「携帯のアドレス、教えてえな」

「いや…あの…」

目の端に映った藤城君がぷっと吹き出しと、肩を震わして失笑をする