吸血鬼達と戯れを

「それで?話って?」

二人は巨木の下に立っている。
河合が指定した場所がここだった。

「えっと…。…あのさ、あたしで良ければ狩野君の彼女にさせてくれないかな?」

狩野は驚く。
まさに倉崎の読みの通りだった。
大して地図も読めない癖にこういう事は読めるみたいだ。
…もっと他で活かせよ…。

「あ〜…。ゴメン、それは出来ないわ…」
「…なんで?あたしの何処が悪いの?」
「いや。全然、河合は悪く無いよ。俺の問題だからさ」
「…そんなにあの女が良いの?」

河合の口調が変わる。

「…悪いな。じゃぁ…」

狩野は後ろを向いて歩き出す。
後ろは振り向かなかった。

「あの女さえ居なければ…」

河合が小さく呟いたのを狩野は知らない。