倉崎が素早く銃を構える。

「待て待て。俺はあんたらを襲う気は無いよ。あんたら、ここは初めてだな?」

二人は答えない。
大体、吸血鬼が話す事自体珍しい事だ。
そして、ランクの高い吸血鬼しか話す程の知能は無い。

「貴様は吸血鬼だな?」

狩野が聞く。

「いかにも俺はあんたらの言うところの吸血鬼だ」

倉崎が銃を放つ。

吸血鬼は首を微かに動かしただけで銃弾を避ける。

「危ないなぁ。兄ちゃん。…あんまり長居すると俺も危ないからな。一つ忠告しよう」
「忠告?」
「奴らが来ない内に帰った方が良い」
「奴ら?」
「じゃぁな。頑張って逃げ切れよ」

吸血鬼はそのまま岩から飛び降りると遠くに姿を消した。

「何だったんだ、あいつ?」

狩野が呟く。