《Side 朱月》


約束の時間に合わせて、俺は図書室を出た。

外で時間を潰せば退屈せずに済んだのだろうが、そんな気分にはなれなかった。

いつものことだ。

特別することがなければ、女の子と遊ぶ前は、ぼんやりしていることが多い。

何を考えるわけでもないのに、ただぼんやりとして、貴重な時間を無駄にしているのだ。


この時間に歩く廊下は、思った以上に静かだった。

誰も残っていないのだろうか。

そう考えていたところで、遠くから会話のような話し声が聞こえてきた。


「何だよ、残ってるヤツ居んのか…」

俺はそのまま足を進めた。

声が次第に近くなる。

何処から聞こえているのかが判る距離まで来たところで、俺は足を止めた。

相変わらず会話の内容は聞こえて来ない。

だが、何だか妙な違和感が、俺を襲った。


「俺の教室…?」