「お疲れ様」


スポットライトの当たる表舞台から戻って来た星に、真新しいタオルと、開けていないペットボトルを手渡した。


「ありがと♪」

星は嬉しそうに微笑み、受け取ったタオルで首元の汗を拭った。

「舞台袖じゃなくて、席に座ってゆっくり見てくれれば良かったのに」


「いつものことでしょ?」

今更ながら、まだその台詞を口にする星に笑いながら、手元に残っていたタオルを4人に手渡した。

「あたしはメンバーの1人なんでしょ?なら舞台に居るのは当たり前。たとえスポットライトは当たらなくてもね。それに、関係者しか入れないこの場所って、ある意味特等席だと思うし」


「そう‥だね」

星は納得した、というよりは安心したというような表情で頷いた。

何故そんな表情を見せたのか、私にはその理由が全く判らなかったが、特別それが気になることはなかった。


「で、どうだった?このライブハウス」


「音は今までで最高だった!」


そう答える星に賛同するかのように、響は大きく頷いた。


「やっぱり有名なライブハウスだけありますよね。俺、次もここが良いって思っちゃいましたよ」


「またすぐ使えるかは別として、機会はあると思うぜ?俺ら、結構有名になってっから。ただし、年齢誤魔化してることがバレなきゃだけどな」

朱月は笑いながら、余韻に浸る響の肩を叩いた。

「ま、とりあえず今は、最高のステージで最高の演奏ができたことに満足しとくんだな」


「ねぇ♪それなら‥せっかくだから、今日の成功を祝いましょ!」


「彗‥お前なぁ、舞台終ったんだから、もうその口調はやめろ。あと、お前調子に乗りすぎ。神楽とMCの取り合いみたいになってたじゃねぇか‥お前がMC張り切る必要はないんだぜ?」


朱月は自分の腕を掴んできた彗ちゃんを、気持ち悪いモノを振り払うかのように扱った。