《Side 朱月》


「ただいま」


ノック代わりの声がして、返事も待たずにドアが開く。

俺は手を止めて、ドアの方に身体を向けた。


「朱月くん、久しぶり」


入って来た水月の後ろから顔を覗かせたのは、1年ぶりに見る郷花さんだった。

髪型が違うせいか、1年前と随分違った印象を受ける。


「郷花さんも、来たんですか?」


「あら、ご挨拶ね。来ちゃダメだった?」


「いや、そうじゃなくて」

俺は、焦って首を振った。

「水月から、知らされてなかったんで」


「無理矢理来ちゃったのよ」


「それもこれも、朱月が日本に戻ってくれないからだよ?」


水月に視線を向ければ、彼の責めるような視線とぶつかった。

また始まった‥と、心の中だけで愚痴をこぼす。