「な、何で笑うわけっ!?」


「だ、だって‥だって彗ちゃ…」


未だに笑いが止まらない天音は、上手く言葉を発することができない。

何故笑っているのかは彗を見て判ったが、俺の目には、いつまでも笑い続ける天音の方が、より面白く映った。


「だから、何で笑うの!?」


「彗、それ裏」


「へ…?」


冷静な瞬輝の声で興奮が冷めたのか、彗は情けない声を出した。

そして、指摘された物を確認する。

彗の手の中にある数枚の楽譜は、見事に全てが裏面で、白紙状態だった。


「うわっ、馬鹿じゃないのぉ?」


神楽は、容赦ない言葉と呆れた視線を彗に向けた。

彗の失態には今気付いたようだが、それは鈍感なのではなく、単に彗を見ていなかったからだろう。

こういったところを目にすると、神楽は本当に天音にしか関心がないのだと、改めて確認させられる。