「いよいよですね」


そう呟く響に目を向けると、いつになく興奮していることが判った。

その一方で、これまでには見せたこともないような緊張も滲ませている。


「何だよ、初ステージでもねぇのに」


俺は、緩む口元を拳で隠した。

てっきり笑ったことを怒るだろうと思っていたのだが、響はそんな俺につられるようにして、表情を和らげた。


「本当ですね」


「えー?響だけじゃなくて、皆も落ち着かないみたいだけど?」


ドアの傍に立っている天音は周りを見渡し、最後に俺を見ると、意地の悪い笑みを浮かべた。


「まーな」


「嫌だわ、天音っちったらっ!アタシのどこが落ち着いてないってゆーの?」


素直に認めた俺とは対照的に、彗は納得がいかないと言いたげに、天音に言葉を向けている。


「えーだって…」

天音は我慢の限界だというように、突然笑い声を響かせた。