《Side 朱月》


「らっしゃーい」


店の雰囲気にはあまりそぐわない、明るく元気な声が俺を出迎えた。


「玉、だからここは居酒屋じゃねぇって言って‥あれ?朱月じゃねぇか」


「コンバンハ‥には少し早いですかね?」


カウンターの奥から顔を覗かせた黒雨さんに、俺は軽く頭を下げた。

ゆっくり顔を上げると、すぐに黒雨さんと目が合った。

俺を見る黒雨さんの表情を受けて、嬉しくなる。

不安を感じていたわけでもないのに、安心感を得られた気分だった。


「2週間ぶりってとこか?」


「そうですね。3週間は経ってないと思います」


「だな」

黒雨さんは何度か頷き、笑った。