「俺が死ねば、必ずその事実は火月の耳に届く。嫌って、憎んで、俺に対しての感情がそれでしかなくならなければ…。その知らせを聞いたとき、「自業自得」だと、そう言って笑ってくれるくらいでないと…。間違っても‥悲しむことなんてないように…」


限界だった。


その場にただ立っているという単純なことさえ、俺にはできなかった。


俺は勢いよくドアを開けて部屋を出ると、ドアを閉め、それを背にしてしゃがみ込んだ。

足下が崩れ落ちて立っていられない状況に、それはとてもよく似ていた気がする。


「えっ?誰!?」


「‥子どもよ。開けて、すぐに閉めちゃったわ」


「子ども?部屋を間違えたのかな…?で、ビックリして逃げちゃったとか?」


「そうね‥きっと、驚いたんでしょうね…」


ドア越しに届く2人の会話を聞きながら、俺は唇を噛み締め、頬を濡らした。


涙を止めることよりも、声をもらさないようにと、必死だった。

歯に力を入れて、声を抑えることに、全神経を集中させる。


痛みなど感じてはいないのに‥口の中で、鉄の味が拡がった…。