「すぐに判るわよ」

立花さんは本当に面倒そうなため息を1つ吐き、俺の背を押した。

「いい?くれぐれも声を発さないように気を付けてよね。一度きりのチャンスなんだから」


「…」


全く状況が理解できていない俺を置いて、病院へと入っていく立花さん。

俺は呼び止めることもできず、慌ててその背中を追い掛けるしかなかった。


さすが有名な大学病院だけあって、人の多い、綺麗な所だと思う。

もし1人で来ていたら、早速迷っていただろう。

勿論、今回はそのような心配をする必要はなかったが、立ち止まることなく足早に進む立花さんを、俺は若干早足で追い掛けなければならなかった。