歩き出す前に、引き止められた。

俺はため息を付き、再び立花さんに視線を向けた。


「水月から逃げるの?」


「‥何だと…?」


「私、貴方に用があるの。ちょっとくらい、いいでしょ?年上の言うことには、素直に従うものよ?」


華やかな笑顔が鼻に付く。

そのせいだろうか?

すれ違うたびに向けられる好奇の視線は、もう気にならなくなっていた。