家に帰ると、リビングには幸矢(コウヤ)さんの姿があった。

だが、スーツ姿のところを見ると、まだ帰ってきたばかりなのだろう。


「しゅ、朱月ぃ」


幸矢さんは俺に気付くと、泣きつくように抱きついてきた。

手加減なしに体当たりされ、かなり痛い。

俺は何とかもがいて、その腕の中から脱出を図った。


「痛ぇよ」


「何処行ってたんだ?もう10時になるんだぞ?いつもこんなに遅いのか!?」


最近は10時を過ぎないと帰って来ないのに、今日に限って早いなんて…。

面倒だと思いながらも、俺はこれ以上の面倒を避けるため、素直に謝った。


「悪かったよ。今日はちょっと用事で遅くなっただけ」


「そうなのか?」

幸矢さんは、ホッとしたように表情を和らげた。