いつも舞台袖から見ていたので、こういった場所で、観客として朱月達の演奏を聴くのは初めてだ。


「んじゃ、天音っちはアタシに見惚れちゃうかもね」

クルクルと髪を弄りながら、彗ちゃんは高い声でそう言った。


「うん、そうかも」


「‥でしょ?」

彗ちゃんは恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうに笑った。


「おい、馬鹿言ってないでお前も準備しろ」

そう言って、瞬輝くんが彗ちゃんの襟を掴む。


「だーっ!だから掴むんじゃねぇよ!」


「それより、いいのか?」

「だから無視すんな!」


「お前の楽譜、見当たらないぞ」


「だからなぁ‥って、マジ!?」


途端に顔色を変える彗ちゃんが面白くて、私は不謹慎だと思いながらも、笑いを堪えることができなかった。