微かに香る、シャンプーの匂い。

そして唇に伝わる、天音の体温。

頬へのキスだったが、ほんの少しだけ、天音の唇に触れていた。


ゆっくりと顔を上げる。

先程と全く変わらない天音の寝顔に、俺は安堵しながら自嘲した。


「最低だな、俺は…。けど‥お前も俺に甘すぎる…」


そっと天音の髪を撫でた。

黒いはずの髪が、夕日で赤く染まっている。


その赤い色を見続けていたから、目が変になったのかもしれない。


赤い髪が、滲んで見えた。