俺は屈んでペンを拾うと、それを机に置いた。


俺は、天音を起こすべきか、真剣に迷っていた。


あのとき‥天音に呼び止められたとき、彼女が寝不足だということはすぐに判った。

理由は、大方検討がつく。

だから早く、家に帰らせたかった。

いや、勿論それだけが理由ではないのだが…。


「それにしても…」

俺は、ため息を付かずにはいられなかった。

「何で俺の席なんだよ…」


天音が座っているのは、他でもない、俺の席だった。

天音の席は廊下側の席で、俺の席とは離れすぎている。

単に、窓側の席が良かっただけかもしれない。

それだけの理由かもしれないのに俺は、自覚してしまう程度には動揺していた。

嬉しいけれど、そうであってほしくない理由が、俺の頭を支配する。